以前 Windows 10 のPCにCD音源を高音質で取り込む方法を紹介しました。
上記の記事ではハイレゾ関連の話題を取り上げていないにも関わらず、「CD 高音質 ハイレゾ」や 「CD 取り込み ハイレゾ」というキーワードで記事にたどり着く方がチラホラいらっしゃいます。
CD音源をハイレゾ品質で取り込む方法を期待して記事を開いた方には残念な思いをさせてしまったのではないかと思います。
そこで今回は、ソフトウェアを使って CD音源をハイレゾ品質でPCに取り込む(インポートする)方法を紹介しようと思います!
なお、先に断っておきますが、この方法で作成されるハイレゾ音源は、あくまでスペック上はハイレゾと言われる品質ですが、「完全なハイレゾ音源」とは別モノの「擬似ハイレゾ音源」ですので注意してください。
CD音源をハイレゾで取り込む方法を解説する前に、まずはハイレゾの定義などをまとめておきます。
- ハイレゾ音源とは何か?疑似ハイレゾとはどういう意味か?
- 一度CDに焼かれた時点で完全なハイレゾ音源では無くなる
小難しい話になりますので、そういう話が苦手で「理論とかどうでもいいから、CD音源をハイレゾ品質で取り込む方法を教えろ!」という方はページ下部までスクロールしてご覧下さい!
そもそもハイレゾ音源とは何か?
CD音源とハイレゾ音源の定義
ハイレゾ音源の定義について理解するには、まずはCD音源(CDスペック)について知っておく必要があります。
サンプリング周波数 44.1kHz/ 量子化ビット数 16bit の音源をCDスペックとする
JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)
このスペックを頭に入れた上で、ハイレゾ音源の定義を見てみましょう。
LPCM換算でサンプリング周波数、量子化bit数のいずれかがCDスペックを超えていればハイレゾオーディオとする。
(例) サンプリング周波数 / 量子化ビット数が…
48kHz/24bit →(CDスペック同等/CDスペック超)→ ハイレゾオーディオ
96kHz/16bit →(CDスペック超/CDスペック同等)→ ハイレゾオーディオ
96kHz/24bit →(CDスペック超/CDスペック超)→ ハイレゾオーディオ
48kHz/16bit →(CDスペック同等/CDスペック同等)→ 非ハイレゾオーディオ
96kHz/12bit →(CDスペック超/CDスペック未満)→ 非ハイレゾオーディオ
32kHz/24bit →(CDスペック未満/CDスペック超)→ 非ハイレゾオーディオ
JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)
サンプリング周波数と量子化ビット数については、図入りで丁寧に解説されたサイトが多いので、検索してそちらを参照していただきたいのですが、簡単に説明をすると次の通りです。
アナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)する過程で行われる「標本化(サンプリング)」において、単位時間あたりに標本を採る(データを分割する)頻度のことです。
音質にどう影響するのかをざっくり説明すると、高い周波数でサンプリングされた音源は、より高い周波数の音(高音)を再現することができます。
アナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)する過程で行われる「量子化」において、信号を何段階の数値で表現するかを示す値のことです。
音質の良し悪しを語る上では、量子化ビット数が高い音源ほどその音の細かい表現が可能になるため、 ノイズ(量子化雑音)が減る、ダイナミックレンジが広がる、感覚的に「音が滑らかに聞こえる」という風に表現されます。
完全なハイレゾ音源とは?
「完全なハイレゾ音源」と呼べるのは、 レコーディングからミキシング、マスタリングなど全工程がハイレゾ品質で行なわれ、非可逆圧縮やCD化されていないものだけです。
この「完全なハイレゾ音源」は、一度でもCDに焼かれてしまった時点でハイレゾ品質ではなくなります。
CD音源から作成したハイレゾはなぜ「疑似ハイレゾ」なのか?
上述した通り、CDスペックは「 サンプリング周波数 44.1kHz / 量子化ビット数 16bit 」です。
スタジオで収録されたマスター音源がCDに焼かれた時点で、22.05kHz以上 (サンプリング周波数の1/2) の高音域は削除され、無限の滑らかさを持つ音は65,535段階(16bit)に分割されてしまいます。
音の情報と滑らかさが失われるのです。
ソフトウェアを使ってCD音源をCDスペック以上の品質(ハイレゾ品質)でPCに取り込むことで音源の情報量は増え、スペック的にはハイレゾ品質となりますが、その増えた情報量というのは音源の収録時のマスターデータが復元されたものではなく、あくまでソフトウェア的に補完されたものです。
これが「疑似ハイレゾ」と言われる所以です。
本記事で解説する方法で作成した音源も、他のブログ等で紹介されている方法で作成した音源も、その道のプロが作成した音源も、CDを基に作成している場合は全て「疑似ハイレゾ」なのです。
また、マスターデータから作成したものであっても、そもそもハイレゾ品質ではないマスターデータからアップサンプリングして作成されたハイレゾは「疑似ハイレゾ」です。
疑似ハイレゾの是非についてはここでは語りません。
それでは、本記事の主題である 「CD音源をハイレゾ品質でPCに取り込む(インポートする)方法」 を解説していきます!
CD音源をハイレゾ品質でPCに取り込む(インポートする)方法
使用するソフトウェア dBpoweramp CD Ripper の準備
今回は dBpoweramp CD Ripper というソフトウェアを使用します。
上記のダウンロードページにアクセスし、ページ中ほどの「Download」から、お使いの環境に合わせてWindows版かMac版をダウンロードしましょう。

ちなみに、dBpoweramp は本来シェアウェアで、今回ダウンロードするのは21日間使える体験版です。
ダウンロードが完了したらインストールしましょう。
2019/02/12 時点での最新版は 16.6 です。

ここからは画像による説明が多くなりますが、掲載している画像は Windows 10 の環境でキャプチャした画像です。Windows 7 や Mac ではレイアウト等が異なる可能性がありますので注意してください。
dBpoweramp CD Ripper の起動・初期設定

この画像のように4つのショートカットが新しく表示されていると思います。
今回は「CD Ripper」を使用しますので、直接「CD Ripper」のショートカットを開くか、「dBpoweramp」を開いて「CD Ripper」を選択してください。

CD Ripperを起動した際に光学ドライブにCDが挿入されていない場合は、次の画像のようなウィンドウが表示されますので、ハイレゾ品質で取り込みたい音楽CDを挿入しましょう。

CD挿入時に「Configure AccurateRip」というウィンドウが表示されることがありますが、「Close」で消してしまって大丈夫です。
CD読み込みが完了したら、次の画像のようにアルバム名や曲名・アーティスト名などのメタデータが表示されます。

続いて、初期設定を行います。
緑色のボタンを選択してメニューを表示し、「CD Ripper Options」を選択します。

次の画像と同じように設定します。

次に、取り込んだファイルの保存先を設定します。
- ウィンドウ左下の Path を任意の場所に設定。ここで指定したフォルダに保存されます。
- Naming をお好みで設定。デフォルトのままで良いと思います。上記の Path で指定したフォルダ内に、[アーティスト名\アルバム名\ファイル名.flac(.wav)]というファイルが作成されます。

これで初期設定は完了です。
ファイル形式ごとのインポート設定
今回はファイル形式 .flacで取り込む方法と .wavで取り込む方法をご紹介します。
それぞれがどんなファイル形式かを簡単に説明しておきます。
- .wav よりファイル容量が軽い (88.2 kHz/24bit/4分程度の曲で 約80MB)
- 対応している再生ソフトが少ない
- メタデータ(アルバム名・アーティスト名・タイトルなど)を格納できる
- .flac よりファイル容量が大きい (88.2kHz/24bit/4分程度の曲で 約120MB)
- 対応している再生ソフトが多い
- メタデータ(アルバム名・アーティスト名・タイトルなど)を格納できる
- 完全無圧縮で高音質
それぞれ一長一短なので、使用する環境などに合わせて選択してください。
ファイル形式 .flac で取り込む設定方法
ファイル形式 .flac で取り込むための設定を行います。
ウィンドウ左下の [Rip to] を [FLAC]に設定します。

続いて、サンプリング周波数を設定します。ここでは 88.2 kHz に設定しますが、お好みでどうぞ。
- [DSP] タブを選択
- [Add DSP / Action] を選択
- [Add DSP Effect] を選択
- [Resample] を選択

表示されたウィンドウで [Resample to Frequency] を 88200 に設定します。

続いて、量子化ビット数(ビット深度)を設定します。こちらもお好みでどうぞ。
- [Add DSP / Action] を選択
- [Add DSP Effect] を選択
- [Bit Depth] を選択

表示されたウィンドウで [Fixed] を 24 bit に設定します。

次にエンコーダの設定です。
- [Encoder] タブを選択
- Lossless Encoding を [Level 5 (recommended)] に設定

以上で .flac ファイルで取り込む設定は完了です!
取り込みを開始する方法は「ファイル形式 .wav 取り込む設定方法」の後に紹介します!
ファイル形式 .wav で取り込む設定方法
ファイル形式 .wav で取り込むための設定を行います。
- ウィンドウ左下の [Rip to] を [wave] に変更する
- [Encoder] タブを開き [Uncompressed] にチェックを入れる
- [Bit Depth] (量子化ビット数) を 24 bit に設定する
- [Sample Rate] (サンプリング周波数) を 88.2 kHz に設定する
- [Channels] を [2 ‘stereo’ (CD)] に設定する

ファイル形式 .wav で取り込むための設定はこれだけです!
いざハイレゾ品質でファイル取り込み!
.flac もしくは .wav 形式で取り込む設定が完了したら、いよいよハイレゾ品質でCD音源を取り込みましょう!
取り込んだ音楽ファイルの保存先やサンプリング周波数、量子化ビット数(ビット深度)など、設定した内容は dBpoweramp に保存されますので、 2度目以降はCDをセットするだけで簡単にハイレゾ取り込みを実行できます!
取り込みたいトラックにチェックを入れて、[Rip] ボタンを押すとハイレゾ品質で取り込みが開始されます!

ハイレゾ取り込み進行中。あまりスペックの高くないPCでもそれほど時間はかかりません。

完了したらログ画面が表示されますので [OK] で消しましょう。
最初に設定した保存先にファイルが保存されていればハイレゾ音源の完成です!

ファイルのプロパティを確認すると、ハイレゾ品質で取り込めていることを確認できます。

dBpoweramp の使用期限が切れたらどうすれば良い?
最初にサラッと書きましたが、今回使用した dBpoweramp は21日間だけ使用できるトライアル版です。
もし dBpoweramp によるCD音源のハイレゾ化が気に入ったら製品版を購入しましょう!
Amazonが圧倒的に安いです!
ハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo music」がお勧め!
- ハイレゾ音源の音楽は聴きたいけど、dBpoweramp の製品版を買うほどじゃない
- 自分でCDからハイレゾ化するのがめんどくさい
そういう方には、ハイレゾ音源配信サイトのe-onkyo musicがお勧めです!
J-POPからアニソン、クラシックまでオールジャンルがハイレゾ配信されています !
おわりに
今回はソフトウェアを使ってCD音源をハイレゾ品質でPCに取り込む(インポートする)方法を紹介しました。
ハイレゾ(疑似ハイレゾ)については賛否両論ありますのであまり突っ込んだ話はしませんでしたが、個人で楽しむ分には皆それぞれ好きなようにすれば良いと思います。
ハイレゾ品質での取り込みは今回ご紹介した通り簡単にできるので、とりあえず僕は手持ちのCDを片っ端からハイレゾ品質で取り込み直して楽しもうと思います!
今回ご紹介した方法で取り込んだ音源はファイルサイズが大きいので、スマートフォンなどに入れて持ち運ぶには不向きです。
ファイルサイズを小さく抑えて可能な限り高音質で取り込む方法は、別の記事で紹介していますのでよろしければご覧ください。(ハイレゾではありません)
以上です。それでは良い音楽ライフを!